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ジャーナル

株式会社MJS Finance & Technology | エムエフティー(MFT)

デジタル化による効率化の肝はペーパーレス 2022年1月電子帳簿保存法が改正

企業にとってテレワークの導入があたりまえになり、その割合は5割~7割程度と言われています。そんなテレワークを導入するうえで重要なこととしてあげられるのはペーパーレスではないでしょうか。

物理的に離れた者どうしが紙書類で情報のやりとりを行うには面倒ですし、手間がかかります。かつ、昨今は環境保護の観点からも無駄な紙を無くそうという動きもあります。

情報のデジタル化ということを考えると、仕事をするほぼすべての人は、PCやスマホを所有しインターネット回線でつながっているため、紙を無くしデータでやり取りをすることは、簡単に思われるかもしれません。

しかし、企業の現場では多くの問題が起きているようです。

電子帳簿保存法が2022年1月に改正

さらには、ペーパーレスを進めるうえで重要な出来事として2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。

電子帳簿保存法とは、損益計算書、貸借対照表などの決算関連の書類や、請求書、契約書、領収書など、企業の税金に関する書類を電子データで保存する方法について定めた法律です。

つまり、企業の税金に関する書類をペーパーレスで保存するルールの改正ということです。

今回は、2022年1月に改正された電子帳簿保存法を軸に、 企業が経理業務をデジタル化させる糸口として、ペーパーレス化を行うという視点でみていきたいと思います。

なぜ、ペーパーレスを進める必要があるのか?

ペーパーレス化は、テレワークの普及によって一気に必要に迫られました。

これまで紙書類でやりとりしていた業務は、人と人が物理的に離れることで、面倒かつ手間のかかるものとなってしまいました。

留めて可視化するにはもってこいの紙書類ですが、遠く離れた場所に移動させる要素を持たせると途端に都合が悪くなってしまいます。

ペーパーレス化を進めると、印刷しない分、書類作成の時間が短縮できたり、電子データにすることで社内に書類を留めておく場所が必要なくなったり、クラウドに電子データを保存していれば、物理的な場所を選ばずデータにアクセスすることができたりするため、作業効率をグッとあげることができます。

また、紙の原料である木を伐採するスピードを抑えることで、SDGsで掲げられている森林を守ることにも繋がります。些細なことに感じるかもしれませんが、ペーパーレス化をすることは、地球環境保護につながります。日本で行なった地球環境保護は、日本だけにとどまらず世界にまで影響を及ぼすことができるでしょう。

ペーパーレス化により生じている問題

ここまでお読みいただくと、ペーパーレス化はメリットだらけに思えるかもしれません。しかし、実は、ペーパーレス化によって現場で生じている問題もあるのです。ここではペーパーレス化によって生じる問題を3つご紹介します。

1.紙の方が見やすい業務は多い

電子データで情報を確認するより、紙で確認する方が作業効率があがる業務も中には存在します。例えば、全体像を確認したい時や、直接紙に書き込んだ方が早い作業や、大きな表などは紙で出力した方が仕事がしやすいです。紙の方が作業効率があがる仕事もあるため、全てをペーパーレス化させることが良いとは限りません。

2.電子データを保存した場所がわからない

電子化したデータの保存先がパソコンのどこに保存したのかわからなくなってしまい、探すのに時間がかかってしまうことがあります。紙であれば目に付くものの、電子データをパソコンに格納すると直感的に見つけることは困難であり、保存した場所を覚えていないと、フォルダの中身をひとつひとつ確認しなくてならなくなります。こうなると、紙書類よりもデータを探すまでに時間がかかってしまうこともあります。

3.紙とデータの保管が重複される

紙とデータの両方で仕事を進めていると、データが重複してしまい、どちらが最新かわからない状態で仕事が進んでしまうことがあります。原本をきちんと処理せず混同してしまうことがあり、仕事の往復回数が増えることで煩雑状態になってしまいます。

このような紙データの電子保存の問題があるなか、電子帳簿保存法が改正され2022年1月から施行されました。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や国税関係書類(決算関係書類・取引関係書類)について、電磁的記録(電子データ)による保存を認める法律のことです。

電子データの書類別の保存要件は以下の通りです。

(表1)

国税関係帳簿とは

国税関係帳簿とは、決算資料を作成するための根拠となる資料のことです。

国税関係書類とは

国税関係書類とは、仕分けをするための元となる書類のことです。

これまでの電子帳簿保存法とは?

これまでの電子帳簿保存法は、電子データでの保存を義務付けるものではなく、

 「紙で保存してもいいし、希望する事業者は電子データで保存してもいいですよ」

というものでした。

そのため、取引先から受け取った電子書類をプリントアウトして紙で保存しても良し、もらった電子メールのまま保存しても良しだったため、特にルールも定められておらず、どこかにまとめて保存する必要等もありませんでした。

しかし、令和3年度の電子帳簿保存法改正により「電子取引」でやり取りされた取引情報(表1の「書類」に該当する情報)は、オリジナルの電子データでの保存が義務付けられることとなりました。これにより、電子データでもらったものは、プリントアウトして紙で保存することはできなくなり、電子データで保存しなければいけなくなります。 この電子帳簿保存法は、2022年1月〜2023年12月までは猶予期間が設けられています。翌月の2024年1月からは義務化となります。

真実性と可視性

ただし、電子データでの保存は、単にご自身のお使いのパソコンやクラウド上に保存しておけば良いというわけではありません。一定の要件を満たす必要があります。この要件は、「真実性」と「可視性」を確保したものである必要があります。具体的に「真実性」と「可視性」については以下の通りです。

真実性の確保

真実性の確保とは、訂正や削除を行った場合、その事実内容が確認でき、データが改ざんされないようにすること。

可視性の確保

可視性の確保とは、保存されたデータを検索したり、表示したり、出力できるようにすることです。

「電子取引」の保存

「真実性」の要件以下1~4のうち、いずれかに対応すること。

1. タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う

2. 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行うもの又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく

3. 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う

4. 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う
「可視性」の要件以下の全てを満たすこと

1. 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

2. 電子計算機処理システムの概要書を備えつけること

3. 検索機能を確保すること
(参照:https://www.f-com.co.jp/blog/2021/09/88843/)

保存要件を満たしたシステムの見つけ方!

電子データを保存するには、真実性と可視性の保存要件を満たしたシステムを用意する必要があります。この要件を満たしているか、否かを判別する方法として「JIIMA認証」があります。

「JIIMA認証」とは、文書情報マネジメントの普及啓発に取組んでいる「公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)」による認証制度です。JIIMAにより「電子取引ソフト法的要件認証」を受けているシステムを見つけることで、電子取引における保存要件を満たしたシステムを使用することができます。

また、電子取引ソフト法的要件認証を受けているシステムをご確認されたい方は以下のURLからご確認ください。

▶︎https://www.jiima.or.jp/certification/denshitorihiki/list/

電子帳簿保存方法に向けてペーパーレス化を!

いかがでしたでしょうか?

ペーパーレス化によって生じる現場での問題もありますが、電子帳簿保存法が義務化されるため、2023年12月までには、現場で起きている問題も解決しながら徐々にペーパーレス化させていく必要があります。

例えば、紙で出力した方が行いやすい作業に関しては紙で作業した後にスキャンして電子データに置き換えたり、電子データの保存場所をルール化させておいたり、ガイドラインやマニュアルを作成しながら義務化に備えて準備していきましょう。

大事なことは、その後の便利さを見据えた、徹底した事前のルール決めにあると思います。DX、デジタル化という世間の流れに乗りつつも、その準備は徹底することをおすすめします。