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ジャーナル

株式会社MJS Finance & Technology | エムエフティー(MFT)

世界と日本のデジタル度ランキングからみる、日本の経理業務におけるデジタル化のヒント

企業がデジタル化を進める動きは日々加速していますが、そんな中、スイスのビジネススクールIMDが発表した2021年の「世界デジタル競争力ランキング」では、日本は64ヵ国中、28位と遅れをとっています。しかし、その指標の中で「電子行政参加」という項目単体では世界4位でした。

また、2021年末に野村総合研究所(NRI)が発表したDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)を指数にした2021年の日本の「都道府県別のデジタル度ランキング」でも日本は行政への電子参加については進んでいることがわかります。

今回は、世界デジタル競争ランキングで遅れをとっている事実のなかでも、日本の都道府県別のデジタル度ランキングで示されたデジタル公共サービスの普及を踏まえ、日本の経理業務におけるデジタル化についての実態と課題、またそれらを解決するための糸口を考えてみたいと思います。

デジタル度を測るDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)とは?ル・ケイパビリティ・インデックス)とは?

今回、日本の「都道府県別のデジタル度ランキング」で使われたDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)は、4つの側面から、デジタル度を0〜100の数字で表し、高い数字ほど総合的にデジタル化が進んでいるという評価を表したものです。

(引用元:DCIにみる都道府県別デジタル度)

この1年間で最もデジタル化が進んだ要素とは?

この4つの側面からみた、2020年から2021年のデジタル度の変化は以下の表ですが、最もデジタル化され、かつこの1年で最も数値が伸びた分野が「デジタル公共サービス」です。

図表:構成要素別に見たスコアの変化(2020年→2021年)

(引用元:DCIにみる都道府県別デジタル度)

このデジタル公共サービスの数値は、オンラインでの行政サービスの提供と、市民がそれを利用しているか否かを表しています。つまり、国の電子サービスを国民が利用できているということです。そして、この数値が最も高かった県は、神奈川県(22.9)で、続いて埼玉県(22.0)、愛知県(21.5)、東京都(21.3)ですが、経済規模がそれほど大きくない福井県(21.3)、滋賀県(19.1)、山口県(18.8)などもランクインしていることから、地方のデジタル公共サービスの利用増加についても、日本全体で見たデジタル公共サービスの浸透を底上げしているように思えます。

このデジタル化が推進された背景には以下のような要因が考えられます。

コロナ禍でデジタル化が加速

野村総合研究所(NRI)が公表した日本の都道府県別のデジタル度ランキングでの2020年7月のDCIスコアと、2021年7月のDCIスコアの変化は図のようになっています。

(引用元:DCIにみる都道府県別デジタル度)

2020年から2021年でほとんどの県の数値が上昇しており、最も上昇したのは宮城県で、前年の46位から24位へ順位を上げています。他にも、岐阜県、徳島県、高知県などの地方によるスコアの上昇が著しく、コロナ禍によってデジタル化が加速したようです。

e-Tax(国税電子申告・納税システム)の利用率が増加

特に、デジタル公共サービスの項目にあるe-Tax(国税電子申告・納税システム)の利用率は、この1年間で多くの県で増加しました。例えば、青森県でe-Taxを利用している人の比率は、2020年7月時点では7%だったのに対して、2021年7月においては倍の14%です。

e-Taxは、郵便局や銀行などの金融機関に直接出向くことなく、パソコンから納税することができるシステムです。

人と会わずに納税でき、更には納税書を必要としないため、会社に出向くことなく納税業務を行うことができます。そのため、コロナ禍の苦境がe-Taxの利用率を上昇させたことは言うまでもありません。

世界基準でみた日本のデジタル度

ここでは世界を基準に、日本のデジタル度を確認していきます。冒頭でお伝えしたとおり、2021年の「世界デジタル競争力ランキング」での日本の総合順位は、64カ国中28位と先進国の中でも遅れをとっています。世界デジタル競争力ランキングでは、3つの要因と、それに付随する基準をランキングで表し、それらを総合して世界デジタル競争力ランキングの順位を決めます。

2021年の1位は、アメリカ。2位は香港。3位はスウェーデンで、4位にデンマークがランクインしました。

以下の図は、「世界デジタル競争力ランキング」における3つの要因とそれに付随する基準にそれぞれ順位が付けられた図です。

3つの要因と従属する基準・指標

3つの要因は、

知識(Knowledge)・・新しい技術を開発・理解・構築するために必要なノウハウ

技術(Technology)・・デジタル技術の開発を可能にする全体的な環境

将来への備え(Future readiness)・・デジタル・トランスフォーメーション(DX)活用するための準備レベル

から構成されています。

そして、これら3つの要因に従属した基準に、更に指標が付随しています。この指標にもランキングがつけられ、総合したものが基準のランキングとして表示されます。

図は、デジタル競争力ランキングの基準・指標の詳細を表したものです。

(引用元:(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」)

将来への備え(Future readiness)に付随する基準の、「適応度」に従属する指標、「行政への電子参加」において、日本は世界ランキング4位を獲得しています。

「行政への電子参加」で世界ランキング4位からみる日本のデジタル化の強み

日本の行政への電子参加は、世界ランキング4位です。日本デジタル度ランキングにおいても、日本の行政への電子参加は高い数値を出しています。この結果から、日本人は国が提供した電子サービスを従順に利用する、という特性が伺えます。つまり、司令塔が決断したことに関して従順に動くという面に関して日本は優れていると言えるのではないでしょうか。

また、2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。これにより、帳簿や決算書、請求書などの国税関係帳簿・書類を電子化して保存することが可能になりました。国で決めた方針を実行するのが得意な日本。今後、国税関係帳簿や書類が紙で保存されるよりも、電子保存される方が多くなる日はそう遠くないかもしれません。

日本のデジタル化の弱み

ここでは、指標の順位から日本のデジタル化における弱みについて読み解いていきたいと思います。

要因項目順位
将来への備え企業の俊敏さ64(最下位)
人材国際経験64(最下位)
将来への備えビッグデータの分析と活用63
人材デジタルスキル62
将来への備え機会と脅威62
日本のデジタル化における弱み

「ビジネスの俊敏性」では日本はワースト1位です。つまり、日本企業は決断から実行までにかなりの時間を有しているという評価です。また、国際経験もワースト1位でした。

企業の決断から実行までのスピードを早める

現在は、コロナ禍という苦境もあり、対面での業務の危険回避という動きが、結果として行政への電子参加を中心に日本のデジタル度は向上しました。

「行政への電子参加」が世界ランキング4位であることに加え、e-Taxの利用率も上昇しています。これは、世界トップクラスであると言えます。 今後、総合的に遅れている日本企業の経理業務のデジタル化スピードを高めるには、企業トップが、「ビジネスの俊敏性」を高める必要があると思います。例えば、企業における承認作業を見直したり、属人的な仕事を無くしマニュアル化させたり、経理業務をD X化させるなどすることで、かかる時間や無駄を省くことができるため、経営層が決断から実行をするまでのスピードを高めることができるのではないでしょうか。決断が早まれば、それを適応する力が日本人にはあります。まずは、企業での決断のスピードを高める施策を打つのはいかがでしょうか。