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ジャーナル

株式会社MJS Finance & Technology | エムエフティー(MFT)

請求書の電子化を進める手順を解説

 

請求書が電子化されていない企業は今も多く、さらにはリモートワークで経理業務が完結できずに、日々、出社しなければならない経理担当者が少なくないようです。

請求書を電子化することで業務効率化やコスト削減ができることはわかっていますが、請求書というのは自社だけの問題ではなく送り先であるお客様の都合もあり、導入するための手間や手順がはっきりせず、躊躇している人も多いようです。

そこで、今回は、請求書の電子化を導入するメリット、電子化が進んでいないことによる業務上の問題や、電子化が今後必須になることについて、解説していきます。

請求書の電子化とは

請求書の電子化とは「請求書をWEB上のシステムを使ってデータとして発行し、メールなどで顧客とやり取りをすること」です。

請求書発行システムを使うことで、これまで紙で行っていた「請求書の作成、印刷、押印、封筒に入れて、郵便局で送る」という一連の作業を効率化できます。

さらにインターネットを使って請求書を送るため、「なるべく早く請求書が欲しい」という場合にも便利です。

また、これまで一件一件、お客様ごとに請求書をつくっていたものを、CSVファイルといわれる一つのEXCELのような顧客ごとの請求額一覧のファイルで、会計ソフトに取り込めたりできるため、請求額一覧を管理表などに転記する作業も不要になります。

請求書の電子化が進んでないことによる業務上の問題

請求書の電子化が進んでいないことのデメリットは、紙でのアナログ作業のため、出社しないと業務ができないことにあります

たとえば、経理担当者に行ったテレワーク実施頻度についての調査では、経理担当者の80%以上が月に1回以上出社しないといけない状況にあることがわかりました。

Q:4月7日の緊急事態宣言発令後、あなたがお勧めの会社・団体等では、経理・会社担当者が現在どれくらいの頻度でテレワークを実施していますか。(予定含む N=1000)

(引用:新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言発令後の企業のテレワーク状況に関する調査結果

これらは、「会社のペーパーレス化が進んでいない」「社外からアクセスできるネットワークの準備ができていない」「個人用のノートパソコンがない」などの理由が挙げられており、オンライン化やシステム化などにオフィス環境の準備が間に合わなくて、テレワークができないケースが非常に多いようです。

つまり、請求書の電子化以前に、そもそもオンラインでの業務に環境が対応してない会社が未だに多いということです。

請求書の電子化のメリット

業務環境をオンライン対応にすることが、請求書の電子化を進めるうえで重要であることは確認できましたが、請求書を電子化するメリットについて改めて挙げると以下の6つです。

  • 請求書発行業務に含まれる請求書印刷や封筒入れなどの単純作業を削減できる
  • 請求書の再発行・修正依頼への対応が簡単にスピーディーになる
  • 請求書発行にかかる経費(封筒や郵送費など)が無くなる
  • 押印・承認のためにわざわざ出社しなくていい
  • 発行当日に相手が請求書を受け取れる
  • 過去の請求書データの管理がしやすく、確認しやすくなる

請求書を電子化すると書類自体が扱いやすくなり、手間とコストは圧倒的に削減できます。

請求書発行ソフトの導入などのオフィス環境の整備や、取引先への連絡などが必要ですが、長期的に見ると電子化のメリットは多いと言えます。

請求書の電子化は法律上問題ないのか?

結論からいうと、電子化した請求書の送付は法律上問題ありません。また、これまで紙での保存が必要だった帳簿等も業務の効率化、ペーパーレス化の推進のために1998年に制定された電子帳簿保存法も、年々、保存要件が緩和され、押印については、2020年6月に政府が「なくても良い」と明言し、2022年1月には、要件が緩和されるだけでなく、これまで書面での保存が容認されていた電子取引データ(※)は、書面での保存は廃止、電子保存が義務化されることになります。

(※)電子取引とは、請求書、見積書、注文書、契約書、領収書等をシステムで作成し、PDF化して取引をすることで、電子取引データとは、そのデータこと。

取引先への同意について具体的な進め方

さて、請求書の電子化を進めていくべきであることは、ほとんどの企業であれば理解されていると思いますが、請求書の発行を電子化する場合、得意先(受け取り側)に同意してもらう必要があり、その連絡をどのようにするかで、お互いなんとなく後回しになってしまって、これまでの紙の請求書を送ってしまっているケースも多いのではないでしょうか。

そこで、得意先には、請求書電子化の案内状を定期的、かつ継続的に送付することで、請求書の電子化率は大きく変わります。場合によっては「●月分の請求書から電子請求書に変更します」と、言い切るのもおすすめです。「電子請求書・紙の請求書のどちらかを選んでください」と受け取る側が選べるようにすると、なかなか電子化が進まないものです。

ここでは、取引先へ請求書を電子化する案内の例文を紹介します。

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件名「今後のご請求書の扱いに関しまして(電子化)」

拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、新型コロナウイルスの感染拡大で出社制限を社会的に要請される状況が長期化すると考えられることをふまえ、弊社ではお取引様宛の請求書の電子化を実施することと致しました。

つきましては、請求書データの送信先について・・

(送信先方法の選択肢を提示)

何卒、弊社の本取り組みにご理解、ご協力を賜れますようお願い申し上げます。敬具

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また請求書を電子化して発行する際には、トラブルを予防するために、請求書番号や件名などをメール本文のタイトルに記載し、どの請求書のメールなのかが明確に分かるようにしておきましょう。

請求書の電子化で事務効率を上げるポイント

請求書の電子化で事務効率を上げるポイントは、「送信先を統一」することです。

メールやスラックなど、取引先ごとに送信先が異なると漏れが発生する可能性があるので、「メールのみ」「専用ページからダウンロードのみ」など統一した方が管理は楽です。さらに、最近では、多くの請求書作成、送信ができる便利なクラウドツールも多いので導入するのも良いと思います。

自社でシステムを一から組み上げるより導入が簡単ですし、月々数千円程度から利用できるので負担も少ないです。

電子インボイス制度

電子インボイス制度とは、「仕入税額控除に必須となる適格請求書を電子化する仕組み」のことですが、2019年に消費税が複数税率となったことを受けて、下請け業者と元請け取引において、適正な消費税の導入を目指した制度です。

この電子インボイス制度については、また、別の記事にて解説いたしますが、この電子インボイス制度導入にあたって採用される仕様が「国際規格Peppol(ペポル)」です。 「Peppol(ペポル)」とは、受発注や請求にかかる電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」の規格で、現在オーストラリア・シンガポールなど30か国以上で採用されており、これからさらに国際的な普及が進むと考えられています。日本でもこの規格に準拠したものの導入が検討されています。

請求書の電子化によってさらに進む業務の自動化

請求書の電子化は今後、ますます進んでいくものと思われますが、このことで、業務の自動化・効率化がさらに期待できます。

特に、請求情報が統一された規格になるということは、異なるシステムを採用していても、データを自動で取り込めるということです。

紙の請求書の時に請求情報と入金情報を付き合わせて確認していた手間が、売り手と買い手で共通した標準IDが付与されるので、会計システム上で入金消込業務を効率化できます。 また請求書が電子化・統一規格で送られてくるので、請求業務をリモート上で完結できるので、出社する必要もなくなると考えられています。

海外取引が増えるともはや電子化は必須

電子インボイスの元になったPeppolは、すでに海外でも多く利用されている共通規格ですが、このような世界規模での仕様の統一は、今後もさらに拡大すると考えられています。

将来的には請求書だけでなく、電子化の領域が拡大されて、海外取引全般の面倒臭さも解消されるのでは、と期待されています。

請求書の電子化は、単に紙の書類をデジタル化するだけでなく、業務全体の効率化や、海外も視野に入れた取引先の開拓など、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。 まずは、電子インボイスの動向にも注目しつつ、制度が始まってからスムーズに業務ができるように、今から少しずつ業務の電子化を進めてみてはいかがでしょうか。