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ジャーナル

株式会社MJS Finance & Technology | エムエフティー(MFT)

小規模店舗でもキャッシュレスに対応するべき?

2021年9月、デジタル庁が本格的にスタートしたことで、経営規模の大小に関わらずデジタル化の波が業務に影響を及ぼすと考えられています。

「キャッシュレス決済」もその一つですが、小規模店舗の経営者には「面倒だから検討は後回し」「手数料がかかるから導入しない」と思っている人が少なくないようです。

ただ面倒だから、利益が下がるからといって対応しないと、売上や集客に悪影響があることが調査を進めていくうちにわかりました。 今回は、キャッシュレス決済を導入しないと、どういう影響があるのか、小規模店舗の経営者が抱えている現状の問題点と打開策について解説していきます。

2021年9月、デジタル庁がスタートしました。

デジタル庁が本格的にスタートし、日本のデジタル化もいよいよ力が入ります。

「人に優しいデジタル化」を目標として立ち上げられたこの庁によって、国や自治体のシステム統一化や、行政手続きのオンライン化など、今まで手作業だった部分をデジタル化することが決定しています。

この流れは「デジタル化は、小規模の店舗には縁がない?」と思っていた経営者も、無視できません。なぜなら、デジタル化していないことで他店と差別化され、売上のチャンスを逃す可能性があるからです。

小規模の店舗でのデジタル化といえば、キャッシュレス決済

小規模の店舗で代表的なデジタル化のうち、導入が進んでいないのは「キャッシュレス決済の対応」です。

今やクレジットカード決済は、一般的なものになりましたが、近年増えているのはペイペイや楽天ペイなどのQRコード決済です。スマホにアプリをインストールしておけば、クレジットカードを持っていなくても銀行口座と連携することで支払いができます。

またQRコード決済はクレジットカードとも連携可能で、この状態で支払をすれば、クレジットカードとQRコード決済それぞれにポイントが付与されるのでお得です。

しかし、都市部では、だいぶ増えているキャッシュレス決済の対応ですが、まだ導入していなかったり、導入をためらっている経営者はなぜ導入していないのでしょうか?

導入をためらっている店舗が気になるのは手数料やシステム導入の手間

キャッシュレス決済を導入することは、お客様に利便性を提供したり、好印象が持たれたりとメリットは明らかです。

しかし、それでもキャッシュレス決済の導入をためらう理由は手数料とシステム導入の手間があるからです。

まず、キャッシュレス決済の中で一番利用者の多いクレジットカード決済は、手数料が3~7%とけして安くありません。

この手数料は、1カ月に100万円を売り上げた場合で考えると、3万円~7万円ですので、仮に利益率が20%だと20万円から13万円~17万円に減ってしまうということです。

また、一方でペイペイのようなQRコード決済だと、手数料が2~3%と少し安くなるため、導入はしやすくなるのですが、その導入に、楽天ペイの端末、ドコモ払いの端末というように、業者ごとにシステムを用意しなくてはいけない手間があります。

さらに必要な専用端末の導入費用など、はじめる時点で、数万円が必要になることがあります。


(主要サービスの手数料一覧と導入費用)


【クレジットカード・QRコード 兼用タイプ】

サービス名SquareAir PAYSTORES
決済手数料3.25%3.24%、3,74%3.24%、3,74%
導入費用7,980 or 46,980円
(決済端末代)
20,167円19,800円


【QRコード 決済タイプ】

サービス名PayPay楽天Payd払い
決済手数料1.60%3.24%~2.60%
導入費用無料無料無料

数字をみるとキャッシュレス決済の普及率はまだまだ?

2020年度の、キャッシュレス決済の普及率は全体の30%と、まだまだ支払い時でのキャッシュレス決済率は低いことがわかります。

ただし、この数字は、2017年と比較すると7%の増加、さらに2025年には38%と増えていくと予測されていますので、順調に普及率は伸びていくと思われます。

キャッシュレス決済対応していないことでお店を選び直した人は31%

それでも、現時点の普及率を考えると、まだまだキャッシュレス決済の導入は後でもいい、と思う経営者もいるかもしれません。しかし、現金決済のみにこだわり続けていると、俳優のオダギリジョーが店主役で出演しているエアペイのCM、「じゃあいいですー」のように、キャッシュレス決済をしたい客を逃してしまうという調査結果が出ています。

たとえば直近3カ月に支払った決済方法(複数回答)を20,000人に聞いた調査では、現金は90%の方が、クレジットカードは72%の方、スマホ決済は36%が利用したという結果でした。

また、キャッシュレス決済を利用している人のうち、お店が現金のみの対応で来店を辞めた人は31%もいることが調査で判明しています。

Q. 現金のみの対応の店舗だったため、店舗に行くことをやめたことがある(n=1500)

Q. キャッシュレス決済の導入状況でお店選びをしたことがある(n=1500)

Q. あなたはキャッシュレス決済が使えないとわかった店舗について、来店意欲が下がりますか? 【n=758】 (単一回答)

さらにキャッシュレス決済未対応の店舗は「悪印象」が57%あり、現金しか扱っていない店舗は半数近くが良い印象を持たれていないことも判明しています。

Q. キャッシュレス決済に対応していない店舗は古いと思う(n=1500)

Q.キャッシュレス決済に対応していない店舗に対しての印象(n=1500)

Q. あなたは店舗などで支払いをする時、前の人の現金支払いで時間がかかってしまうことに対してイライラすることがありますか? 【n=1000】 (単一回答)

キャッシュレス決済の導入で、売上アップのヒントが得られるメリットも

キャッシュレス決済を導入することで、現金以外で決済したい客、特に若いユーザーを取りこぼすことがなくなるので集客につながることがわかりました。

しかし、それだけでなく、キャッシュレス決済によって支払われた売上は、いつどんな商品が売れたのかが把握しやすくなり、売上につながる予想外のデータがとれることもあるのです。例えば、毎日の天気とかけ合わせれば「雨の日は〇〇と言う商品がよく売れる」とか「週末は〇〇が売れた」というような分析も可能になるのです。

さらに売上がデータになっていることで自動で仕訳する会計ソフトと連携すれば、収支の管理も楽になるでしょう。「売上の計算に時間がかかる…」と悩んでいる経営者の方には、導入の余地が充分にあります。

キャッシュレス決済はまだ先、ではなく、すぐに導入したほうがいい

古いタイプの経営者には、キャッシュレス決済のように新しい仕組みに抵抗がある人がいるでしょう。地域の人はまだ使っていない、もっと普及率が増えてからでも間に合う、と思っている方も多いと思います。

しかし、思っている以上にユーザーの方は柔軟です。周囲の利用者を見かけたとたん、普及率は上がり、その上昇グラフは、どんどん急カーブで上がっていくものです。その時点で、現金以外の決済方法を導入しないと、イメージとして、ライバル店に差がついてしまいます。

キャッシュレス決済を使っているユーザーには、現金決済のみのお店は選択肢から外されますし、キャッシュレスアプリの地図上で確認されると、表示すらされないので、客を逃す確率も高くなるのが現実です。

「利益が下がるから」「導入コストが高いから」と、デメリットばかり考えていると、実際に見えないコストである売上管理の人的コストや、顧客分析もできず、利益率も売上を伸ばすチャンスも低下させているかもしれません。

また、「キャッシュレス決済は現金よりも、支出することに痛みを感じにくくなる」という学説があり「いつでも支出を把握できる」という安心感から、割引キャンペーンなどで、ついつい使いすぎてしまう人もいるようです。

つまり、キャッシュレス決済を導入することで、財布のヒモが緩いユーザーがお金を使ってくれる可能性が高くなっているケースがあるのです。

特に若い世代はキャッシュレス決済がメインで、現金を持たない人も少なくありません。

最近では、伝統的な事業を継承し続けている印象の強い葬儀社でも、キャッシュレス決済を導入し始めたというニュースも目にしました。

より多くの顧客層を獲得し、チャンスを逃さないためにもキャッシュレス決済の導入を検討してみてください。